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短くなってきたたばこを、灰皿に押し付ける。
今度は喉が渇いて冷蔵庫の扉を開けに行った。
「ビール、1本くらい残ってた気するけどなぁ……」
大して何も入っていない小さな空間を虚ろな目で探す。
だけど、お目当ての物よりも先に目に飛び込んできたのは、オレンジジュースだった。
「……まだ残ってたんだ」
三日月のためだけに買って置いていた飲み物。
あいつコーヒー飲めねーし、お酒好きとか言う割には酔っぱらうの早くて、吐きそうになるから出したくなかったし。
なのに、水とかお茶出すと文句言うし。
「………」
だから、盛った。
絶対飲み干す確信があった。
疑わずに、美味しそうな顔をして。
だけど。
「俺は、どうしてクスリなんか盛ったんだろうな」
残り物をシンクに流しながら、ポツリと呟いた。
最初はそんなつもりなかったのに。
クスリだって元々は、三日月を守るために仕入れたものだったのに。
『栄治』
あいつがその名前を口にするたびに、心がざわついたのを感じた気がする。
聞くのが嫌で嫌で。
黙らせたかったんだろうか。
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