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「んぁ…?」
なんか…重…。身体の上に何か乗ってるみたいだな…。もう朝?でも今日休みだから、もうちょっと寝てても…いいか…。
いいよな…。ん…?んんんー?
「………おうっふ」
「………すぅ」
一瞬で目が覚めるとはこのこと。ちょっとだけ目が覚めて、ぼうっとして、天井を見つめて。二度寝しようかなぁとふと視線を下に向けたところで意識が一気に覚醒した。なぜか。
ものすっごいお美しい寝顔が俺の胸の上にあったからである。なに、この…。えっ、待って何コレ。
誰かは一瞬で分かった。でも待って、待って?
首だけ持ち上げて部屋を見渡す。うん、間違いなく俺の部屋。昨日彼が泊まりに来たりしたか?そんな記憶はない。
でも…。いるなぁ。
しかも大きな身体を俺の身体の上に半分ほど被せて、お顔は俺の上下する胸の上に置いて、すやすやと何とも健やかな寝顔を無防備に晒している。
なんでここに。てか今何時だ。
時計を確認しようと身体を僅かに動かしたせいか、胸の上で「ううん…」と何とも艶っぽい声が漏れてどきりとした。何コレ。ドッキリ?
いくら見慣れてたって起きてすぐ人がいるだけでなく、この顔面があったらびっくりするだろ。夢かと思った。いやなんか腰が痛いわ。現実だわ。
あわあわしながら寝顔を見守っていると、やがてぼうっと重たい瞼が開かれた。睫毛ってマジで揺れるんだな。朝日を浴びたその姿は本当に美しいという言葉が似合う。
よだれ垂れてんのに…。
「………あきとだ」
「ちとせくん」
「うふふ、あきとだぁ」
「あの、酔ってます?」
未成年の飲酒はダメ、絶対。でも寝起きの彼は大体いつもこんな感じにふわふわしてるから、もちろん違うと思うけど。
「おはよう。…かわいい」
「はい、おはよう。何でここにいんの」
「朝、来た」
「あさ」
「ん。六時、くらい…?」
はっや…。え?いやいや、はっや…?早くないか?
いつも登校時間ギリギリまで寝こけてる彼が、朝六時起床だと…?いやここに来るまでの数分を加味するともっと早いのか。今日は大雨なの?
「なぜそんな早朝に…てかどうやって」
「おばさんが入れてくれた」
「あ、そうなの。まぁ確かに六時なら起きてるかもだけど…じゃなくて」
「んー?」
「何でそんな朝早くに来たの?」
確認すると現時刻は大体九時過ぎ。つまりはもう三時間以上こうして一緒に寝てたということだ。多分、こいつがうちに来てすぐに俺のベッドに潜り込んだのならば。
いやマジで何で。
「………」
「いやいや、今二度寝しようとすな」
「…んん」
「何か約束してたっけ?」
「してない…けど」
「けど?」
「あいたかった…から?」
「んー!」
そっかぁ!かわいい!見上げながら言うのあざとい!じゃなくて!
会いたかったからってわざわざそんな早起きして来て、あまつさえ俺を起こさず自分も同じベッドで寝て。マジで何してんだこいつ。わんこか?
やっとこさ上体を持ち上げて座るも彼は依然起きようとしないまま。そのままごろりと俺の膝に頭を置いて膝枕みたいな状態になった。足が長すぎてベッドから余裕ではみ出てるのに、起きないらしい。
「ここ、いい匂いする…。やっぱここに住みたい」
「それ来るたび言ってんね」
「来るたび思ってる」
しれっと答えたけど、初めて俺の部屋に来た時のこいつの第一声はまだ覚えてる。確か「やっぱりいい部屋だね」とか言ってたなぁ。
「やっぱり」だなんて、まるで来たことがあるみたいな言い方だなと思ったからまだ覚えてんのかなぁ。記憶違いかも。まぁそれはいいや。
「いい匂いとかするかなぁ」
「する…。ここ住む…」
「こらこらこら、そこで寝るな?膝が痺れるぅ」
「………すぅ」
「寝るなー。マジで二度寝した?」
がっちり長い腕でお腹までホールドされたまま、彼がお昼過ぎまで起きることはなく。俺の膝どころか色んなところが痺れたのは言うまでもない。
その代わりカメラロールはめちゃめちゃ寝顔で埋め尽くされたからまぁ、良しとしよう。
「あいたかった」とか。言ってたけど…。それが理由なんだろうか。本当に?
今までこんなことはなかったのに。
結局早起きどころか起床するのが苦手な彼が、何でわざわざ早朝に来たのか。真意は謎のままだなぁ。
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