99人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしてだろう。今日も今日とて、ベッドがあったかい。
もうここ数週間ほど、起きたら千翔星がいる朝が続いている。毎日ではないけどあの休日から少しずつ頻度が増えて、もうさすがに驚かなくなってきた。あまりに来るものだから、どうやらうちの合鍵を貰ったらしいと聞いたのは登校してる時。マジかぁ。
別にいいけど、それで夜中にも来てるんだなと妙に納得。いや、自分の家で寝ろよ…。
そうは思うものの断る理由も嫌な気持ちもないものだから何も言えないな。もう慣れてきちゃったし…。でも理由は未だに分からない。
いつからだろう。やっぱりあの日からだろうか。
やっぱりあの日、俺が職員室の外で泣いてるのを見てたんだろうか。それでこいつなりに気を遣ってたりするんだろうか。自惚れかな。ただ単に本当に気紛れで来てるだけかも。
でも、二度寝するとはいえ、一度は早朝に起きてわざわざ移動して、人ん家に上がり込んで…。そう考えると絶対自分のベッドで寝てた方が楽なはずなのに、ロングスリーパーのこいつからしたら中々の労力だろうに、どうしてそこまでするんだろう。考え過ぎて、もういっそこいつの言う通り一緒に暮らした方がいいんだろうかだなんて考えまで浮かんでしまう。そうしたら前みたいに俺が起こしに行かなくたっていいもんな。今だって、起きて千翔星がいるとどこかほっとさえしてしまう自分がいるくらいだ。不法侵入されてるのに…。
俺って本当こいつに甘いというか…好きなんだなぁ。おっきいわんこに懐かれたみたいな感じかな。髪もふわふわしてるし、寝てても起きててもぼんやりしてるから撫でても何も言われないどころか擦り寄ってくるくらいだ。やっぱにゃんこかな。どっちでもいいし、どっちでもない。ただ、心配をかけてるとしたら申し訳ないなと思う。
「…ちとせ」
また夜中にでも来たのかな。ふと目を覚ますとまた、胸の上に彼が寝ていた。何をしても起きなさそうな千翔星の髪をそっと撫でながら、小さく名前を呟く。ここに来るために今日は一体何時に起きたの、だなんて問いを溢しながら。
すると寝ているはずなのに、頭を擦り寄せられた気がした。まるで返事をするみたいに。
「まだ暗いから。…おやすみ」
日が昇る頃、甘えん坊な頭を胸に抱いて俺ももう一度瞼を閉じた。この体勢にも慣れたもんだ。
最初のコメントを投稿しよう!