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百日後の楽園
地球には、ものすごく退屈だったり、不満が多かったり、理不尽なまま人生を終える者が少なからずいる。
そんな彼等の魂を救い上げ、この楽園へと誘ってあげる。それが、今の僕の仕事だ。
正確には違うのだけれど――彼等にとってすれば、僕は神様と呼んでも過言ではない存在なのだろう。
「さあ、いらっしゃい。君の番だよ」
ふらふわの緑の草原に降り立ったのは、一人の女性だ。真っ白な光を纏っているのは、まだ魂だけの存在だからである。彼女の肉体は、これから僕がこの場所で構築することになる。まだ希望を尋ねていないので、今の彼女は前世の姿のままだ。
ぼさぼさの茶髪。派手な化粧。たるんだ頬、はちきれんばかりの腹を包む、年不相応な可愛らしいワンピース――の中年女性。少女の頃の夢を追いかけたまま、されどけして満足することもなく食中毒になって死んでしまった彼女は人生にたくさんの未練がある。まさに、この楽園に移住するに相応しい存在だ。
「う、うん……?」
彼女は呻き声の後、ゆっくりと体を起こした。そして、頭上に広がる見たこともないような深い青い空と、ふわふわの草原に倒れている事実に気づいて驚いた様子だった。草を払いながら立ち上がり、そこでようやく僕の存在に気づく。
「だ、誰!?こ、此処は何処なの……あたし、家にいたはずよ!?」
「そうでしょうね。ご自宅で、帰ってきたところで倒れられたんです。食中毒の症状でしたから、かなり苦しかったことでしょう?」
「え、ええ……ってなんで知ってるの!?」
知っているも何も、僕は地球人より遥かに高い科学技術を持っている。彼女のような一般人の様子を知ることなんてわけもないことなのだが。
そう、僕は見ていた。彼女が自宅アパートに帰ってきた直後、リビングで嘔吐したところも。トイレに駆け込もうとして間に合わず、激しい腹痛下痢と嘔吐に七転八倒しながら苦しんで死んでいったところも。――まったく、いくら酔っ払っていたとはいえ、友人とろくに知識もないのにキノコパーティなんてするものではない。何種類もの毒キノコをあれだけ食べて、むしろよく自宅に戻ってくるまで体がもったものである。
「あなたは亡くなって、魂だけの存在となってここにいるんです。そうですね……あなたをこの楽園に呼び寄せたのは僕ですから、神様みたいなものだと思って頂いて構いませんよ」
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