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僕の親は、僕に関心を示さなかった。自分以外の人間に興味が無かったのだろう。当然、愛情を向けられていると感じたこともない。だが、それがあるように見せるのは上手く、おかげで厄介事に巻き込まれたことは一度もなかった。親は僕に愛情を注いでいるように見せ、周囲を安心させることに長けていた。そもそも、愛情なんてものが本当に存在するのか。錯覚ではないのか。いや、多くの人間が揃って錯覚しているのならば、ある、といっていいのではないか。そんな思考。
今なら理解できる。錯覚だろうとなかろうと関係がない。自分の中に生まれた感情を信じるか信じないか、それだけなのだ。自分の感情を疑う必要も、疑うことを後ろめたく思う必要もない。そう確信している。
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遊園地に行きたいと言い出したのは、彼女だった。
遊園地というのは、彼女にしては少々子供っぽい提案に感じられた。しかし、どこに行きたいか、という問いに彼女が明確な答えを示したのは初めてだったので、僕は喜んでそれを受け入れた。
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