いつか解凍される痕跡

6/9
前へ
/9ページ
次へ
 今、この場で言ってしまおう。そして、僕の罪も彼女に告白してしまおう。彼女の前では、僕の全てを曝け出していたい。僕に罰が下されるのならば、その決定権は彼女に委ねたい。僕の告白に、彼女は驚いてくれるだろうか。彼女に出会った後の僕のように、初めての感情を経験してくれるだろうか。やられっぱなしの僕は、あなたを少しくらい翻弄できるのだろうか。  立ち止まった僕を、彼女は不思議そうに見つめた。 「あなたに伝えたいことがあります。僕の気持ちと、それから……」  僕は勿体ぶるように深く呼吸した。実のところは、自分の緊張を抑えるためだった。  しかし、彼女は僕の言葉を待たずに、くすくすと笑いをこぼした。  訳が分からず戸惑いの視線を向けると、彼女は唇の両端を美しく上げて首を傾げた。 「貴方は、詐欺師なんでしょう?」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加