7994人が本棚に入れています
本棚に追加
会社を出て底冷えする1月の夜の空気に震えてから、手探りでバッグの中のスマホを手にする。いくつかの宣伝メールと友人からのメッセージはあるようだけど…彼からのメッセージはなく、歩きながら電話をしてみることにした。
「好樹」
‘莉世、どうした?’
「どうもしないけど、今どこ?体調は?」
‘どこって…普通に家。もう大丈夫。昨日はごめんな’
「それはいいよ。大丈夫なら良かった」
‘ちょっと疲れてたかなぁ。今日は普通に出社したよ’
「今年に入って、好樹は残業が増えたもんね」
この2週間ほど、これまでになく残業だと言う彼、菊村好樹は、昨日の日曜日のデートを朝になって体調が悪いとキャンセルしてきた。買い物して行こうか、と言う私に‘インフルエンザとか分からないから、今日は来ない方がいい。食べ物はある’と何度も言ったので昨日は部屋に行かなかった。
でも…この2週間、私は彼の部屋に行っていない。残業だと言われて平日の夜に会っていない。週末はデートしていたけれど今週はキャンセルされた。
私は彼の浮気を疑っている。まだ何の確証もないけれど、好樹の言動が今までと違っているから勝手に疑っている。
「今から部屋に行っていい?」
最初のコメントを投稿しよう!