Wolf Moon

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会社を出て底冷えする1月の夜の空気に震えてから、手探りでバッグの中のスマホを手にする。いくつかの宣伝メールと友人からのメッセージはあるようだけど…彼からのメッセージはなく、歩きながら電話をしてみることにした。 「好樹」 ‘莉世、どうした?’ 「どうもしないけど、今どこ?体調は?」 ‘どこって…普通に家。もう大丈夫。昨日はごめんな’ 「それはいいよ。大丈夫なら良かった」 ‘ちょっと疲れてたかなぁ。今日は普通に出社したよ’ 「今年に入って、好樹は残業が増えたもんね」 この2週間ほど、これまでになく残業だと言う彼、菊村好樹(きくむらよしき)は、昨日の日曜日のデートを朝になって体調が悪いとキャンセルしてきた。買い物して行こうか、と言う私に‘インフルエンザとか分からないから、今日は来ない方がいい。食べ物はある’と何度も言ったので昨日は部屋に行かなかった。 でも…この2週間、私は彼の部屋に行っていない。残業だと言われて平日の夜に会っていない。週末はデートしていたけれど今週はキャンセルされた。 私は彼の浮気を疑っている。まだ何の確証もないけれど、好樹の言動が今までと違っているから勝手に疑っている。 「今から部屋に行っていい?」
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