三ヶ月後

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三ヶ月後

真奈美が一人暮らしを始めて三ヶ月が経っていた。  早苗のご両親が経営している愛媛のホテルに大学時代の友人と行くことが決まり、仕事も恋も真奈美は順調のはずだった。  それが、狂い始めたのは真奈美の部署に滅多に来ない「泉忠彦」が来た時から始まった。 「おはようございます。部長」  「あー。おはよう。今日は後藤君に用があってね。ちょっとA会議室に来てくれないか?」  後藤直也は何だろう?部長の話って?と心配しながら「わかりました」そう言ってA会議室に向かった。中に入ると泉は後藤直也に済まなさそうな顔をして言った。「後藤君申し訳ないが、営業部署に異動してくれないか?君~ITエンジニア部署の桜井真奈美と付き合っているのか?  会社の決まりは覚えていると思うけど、同じ部署の人とは恋愛禁止のはずだよ?わかってると思うが同じ部署の人と恋愛をしてしまうと仕事に支障が出る事があるんだ、実際過去にそういうことがあったから決まりができたんだよ。後藤君、君には悪いが、皆と噂してるんだ。今のところ空きがあるのは営業だけなんだよ。 明日から異動を頼むよ。  営業部署には話をしてあるから」後藤は部長に言った「そんな困ります。私はこの仕事が好きなんです。営業なんてやったことありません。  エンジニアになる為に、僕は資格を取るのに頑張ってきたんです」後藤直也は必死に泉部長に訴えたが、泉は「規則だからね」  そう言うと会議室から出て行った。  廊下には「異動を命ずるエンジニア部署から営業部に異動 後藤直也」とすぐに貼り出された。  がっくりと肩を落として後藤直也はエンジニア部署に戻った。同じ部署の仲間のほとんどは今、御客様との打ち合わせ中だった。  真奈美は「何だったの?」直也に聞くと直也はこっそり言った。「僕達が付き合ってる事がばれちゃったよ。誰かに外で会ってたところ見られていたのかもね?明日から営業に異動だよ」「えっ?営業部署は辞める人が多くて有名な部署大丈夫?」直也は真奈美に言った「営業なんてやったこともない。僕はこの部署が好きだったのに」  真奈美と直也はその日を境に日曜日も仕事で忙しくなった直也とはまともにデートどころか会話さえできなくなっていった。  たまに電話を掛けても「ごめん今、接待だから」そう言って電話を切られ日曜日に電話を掛けても「これから御客様に会うから」そう言われ電話を切られてしまった。  真奈美はいつも直也の身体の事を心配していた。 直也はどうしてるのか?直也は会社でもすぐ外に出てしまう為、真奈美は話し掛けられずにいた。  そして、最近 部署の仲間が何だか真奈美に対してよそよそしいと真奈美は感じていた。  まるでばい菌でも見るように真奈美をじっと見ている。  はじめは気のせいだろうと思っていた真奈美だったが今は飲み会にさえ、誘われなくなっていた。  そう真奈美は今、会社で誰が見てもわかるくらいに孤立していた。  それは、エンジニア部署だけではなく次第に他の部署からも孤立していった。そして、次第に誰も真奈美に話しかける社員はいなくなっていた。  真奈美は何で会社のみんなは自分と話してくれなくなったんだろう?と不思議だった。今までは飲み会によく誘われたのに~何故?真奈美にはその理由に心当たりがなかった。 真奈美は何も知らなかった。  働きやすい皆いい人ばかりだと思っていたのは、自分だけだったと言うことを真奈美は知らなかった。
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