もう一つの解禁

5/5
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「これからも私たち、いい探偵コンビでいましょうね」 「あぁ。これからもよろしくな」  互いにしっかりと握手を交わす。交わしながら、その血管の浮き出た手の甲と細く長い指に、つい視線が引き寄せられてしまう。  すると、ふいに繋がった右手ごと身体を引き寄せられたかと思うと――。 「えっ……ひゃっ!」  額に軽くキスを落とされた。 『もちろん恋人としても、な』  言外にそんなことを示された気がして、ドキドキすると同時に頬が緩む。私は、お返しとばかりに背伸びをして、その唇に自ら触れたのだった。  普段、私は学生、(きょう)さんは教師の仮面を被り、正体を伏せている。それはまるで、目眩(めくるめ)く仮面舞踏会でずっと踊り続けているかのよう。しかし、踊ることをやめてはいけないのだ。  それは(すなわ)ち、事件の迷宮入り――二度と真相解禁(解明)の日は来ないことを意味するのだから。               ―おわり―
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!