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誇らしげに「ミャア」と鳴いたミケの姿に、くすりと笑ったとき、京さんは改めて開口した。
「流響、おとり捜査はこれっきりにしよう」
「え?」
私は単純に、どうしてという意味で小首を傾げる。京さんは、いつも以上に眉間に皺を寄せ、続けた。
「今回は幸い上手くいったが、犯人みんながみんな、爽木みたいな大人しい奴とは限らない。お前の好意を真に受けるだけならまだマシだが、あわよくば、なんてことを考える奴の方が、きっと多い」
地道な聴き込みや、裏付け捜査に積極的な京さんと違って、私は毎回、犯人と目星をつけた人物の懐に入り込むことに躍起になる。
そのことを見越してか、彼は私が何か言う前に早口で、「俺は流響のことが心配なんだ」と続けた。
「これからは、今までみたいに毎日会えるわけじゃない。きみに何かあっても、すぐに駆けつけられないかもしれない」
その言葉に不安を覚えると同時に、私は今まで京さんに守ってもらっていたんだという、途方もない安堵が胸いっぱいに押し寄せた。でもやっぱり、少し切ない。
そっか……。やっと教師と生徒っていう、しがらみから抜け出せて嬉しいとばかり思っていたけど、卒業したっていうことは、そういうことなんだ……。
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