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私はなんだか急に心細くなり、思わずすっくと立ち上がると、京さんに詰め寄った。
「分かりました、おとり捜査はもうやめます。その代わりじゃないですけど、だから、明日デートしてください!」
「明日!?」
立ち上がって思い切り目を剥いた京さんは、身振り手振り慌てながらも宙を向いて、ぶつぶつと呟く。
「お前は今絶賛春休み中だろうが、俺は年中忙しいんだぞ……ったく。ええと……明日は残業はなかったな、確か。そうなると終わるのは……」
急なアポなんだから、すげなく突っ返してくれたって別にいいのに。一見冷たそうで、でも実は優しいところにキュンときたんだよなぁ……と、私は“好き”を噛み締める。
その反動も手伝ってか、思わず調子に乗って「お家デートでも大丈夫ですよ?」とニヨニヨしながら小首を傾げたのだが、「バカ!」と額を小突かれてしまった。
「初デートにそれはないだろう。折角の交際解禁記念なんだぞ」
「解禁って……」
そんな大袈裟なと思ったが、笑えなかった。だって考えてみたら、確かにそうだもの。私はこの三年間、十分すぎるほど待った。こうやって、他愛もないことを肩を並べて話せる。――たったこれだけのことだが、幸せだと感じるほどに。
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