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そして、目の前でそれを真剣な顔で言ってくれた京さんも、きっと私と同じ気持ちだと感じて、嬉しくなった。
「――京さん」
私は改めて、噛み締めるように呼びかける。そして、「デートのご提案なんですけど……」と畏まって、姿勢をピンと伸ばした。
「なんだ、何かリクエストがあるのか?」
いつも通りの冷静な口調だが、どこかハラハラしているように感じるのは、気のせいかな。まあ、でもいいや。私はニヤリとほくそ笑む。
「記念日には、オシャレなディナーとかっこいいエスコート」
「は!?」
「冗談でーす」
有名なJ-POPの歌詞を拝借しただけなのに、このテンパリ様。なんか新鮮で可愛い。……って言ったら多分、凄い勢いで睨まれるな。
ともかく私が言いたかったのは、こうやって周りを気にせず、あなたと話せることが、何より嬉しいんだよということ。
「ねぇ、京さん」
「ん?」
三毛猫ミケと白猫が茶色の住処に戻って行くのを見送りながら、私は右手を差し出した。
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