解禁当日

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 そしてまた、私はあることに気づいたのだ。それは、彼は男子生徒と話しているとき、必ずワイシャツの第二ボタンを触っている、ということ。毎日、カメラ越しに見れば見るほど、それはレンズのピントを調節しているようにしか思えなかった。  順を追って、それらを淡々と伝え終えると、爽木(さわき)先生は遂に口を完全に閉ざした。  俯き唇を噛み締めたその姿は、悔しいというよりも、自分の起こした事の重大さを突きつけられ、打ちひしがれているように見えた。 「校長先生がお呼びだ。――私についてきていただけますね? 爽木先生」  床に散らばった写真をかき集めた後、ゆっくりと歩み寄り、項垂れたその背を促す稲見(いなみ)先生。  最後だけ敬語を使ったのは、教室内の空気の異変に気づいた生徒たちが、近くまで群がってきていたからだろう。私立学校の重厚な扉を隔てても、彼のよく通る声は聞こえてしまう。  佇む二人に代わって私が扉を開けると、稲見先生は爽木先生を伴って廊下へ出た。途端、生徒たちがマスコミのように押し寄せ口々に質問を浴びせたが、彼は爽木先生を(かば)うようにして歩き、一言も口を割らなかった。
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