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アウトローラルゴ
アウトローラルゴ
これは、ある年老いた犬の話。ちょっとした縁で彼の元を訪れた私は、ラルゴという犬の話を聞いてみたくて話しかけた時のことである。
僕の名前はラルゴ今年11歳になる
犬の11歳てのは人間に比べてずっと早いからそうだなあ、もう世間ではおじいちゃんて呼ばれるくらいの年齢だな
思えば随分と長い間生きてきたように思うけど、今の気持ち?
そんなもの聞きたいなんて、物好きだな。でもいい機会だから話してもようか
僕が生まれたのは北の地方で、その頃には大きな地震なんかもあったりして、世の中荒れてたような気がするよ。3人兄弟で生まれたんだけど、母親が僕のことばかり嫌うもんだから、あんまりいい思い出はないな。そもそもみんなバラバラになっていく運命だったからそれもいいかなって思ってたよ
犬の学校みたいなところに行かされてからは、くる日も来る日も
あっちこっちをいじりまわされて、そのくせ散歩や美味しいものなんか何もなかったから、楽しかった思い出なんてないなあ
そんなある日一人の女の人が僕に話しかけてくれたんだ
『どうしたの?あなた、あまり笑わないね』
笑うだって?そんなこととっくに忘れてたよ。
僕は話しかけられても無視を決め込んだんだ。だって人間て、都合の良い時にしかここに来ないからね。
何度か話しかけられるうちに少しだけその子が来るのが待ち遠しくなったけど、そんなことは期待しちゃいけないと思ってたさ
その頃の僕は口の中が痛くてご飯もあまり食べられなくなっていたし、具合がすごく悪かったんだ
学校では僕のことをもういらないって言ってるようだったよ
ああ。僕はどこにいてもいらないって言われるんだな
まあいいさ、生まれた時からそういう生き方だからね。
もしかしたら自由にどこにも属さずに生きていたらもっといろんな楽しいこともあったのかもしれないとその時は思っていたよ
「さあ、行くよ」
寝ていたら、そんな声で目が覚めた。随分時間が過ぎた再会だけどね
顔を上げるとあの子が目の前でリードとカゴを持って立っていた
どこへ?ああそうか僕はもういらないってことになったんだな
すぐにそう悟って、少し嫌な顔をしたけれど、その子に迷惑をかかけたくないから、仕方なく従ったさ
どのくらい移動したかわからないけど僕はある家に連れて行かれた
それはその子の家のようだったよ。
『今日からは私の家で一緒だよ』と彼女は言った
一緒
一緒
一緒
これってどういうこと?
一緒になんて言われたことがない僕は正直戸惑った。でもなんだかずっと一緒にいてくれる人ができたようだということはわかった
口の中が大変なことになっていて大きな手術もしたし
大人しくなるような手術もされたけど
『一緒』
という言葉を聞いてから僕は一人じゃないってとっても嬉しかったから、我慢したんだ
時折一人にされると怖くなって騒ぐからきっとみんな困っているだろうけど、『一緒』の言葉にしがみついてどこにも一緒にいたいんだよって随分今も困っているだろうね
これが今までも僕の話。
そして今
僕はたくさんの家族に囲まれて生きている
正直、他にもひまわりってこがいるから、少しは遠慮したいところだけど、ひまちゃんはそれなりに、僕よりも気を使うことが多いから、僕が目を瞑ってあげてるんだけどね
だってさ
一緒にいられる家族がいるって僕にとっては手に入らないものだったから。
「一緒」
この言葉がずっと僕に魔法をかけてしまったせいで、少しでも一人だと不安になっちゃう癖は治らないけど
「大丈夫」って言ってくれると安心するよ
この家に来るまでは、愛想もない、きっとアウトローな奴だって思われてたんだ。
僕だって自分で嫌なやつだなって思うことがあったもの
もう少し笑うとか?しっぽを振るとか・
そんなことはいつの間にか忘れてしまったから
周りは僕のことをアウトローラルゴって呼んでいたよ
アウトロー=無法者
いいじゃんかそれで
そうやって人間の都合で、好きにすればいいと思っていたのは間違い無いんだけど
こうやってもう年も随分とってしまい、後少しの時間だなと思った時に振り返るとそんな日々も懐かしいよ
さあ。僕の話はこんなところかな
聞きたいことは聞けたかい?
僕もいろんなことを思い出して楽しかったよ
そろそろ眠くなったから、もういいかな
私がラルゴのそばを離れようとした時
ふと、顔を上げて彼は言った
『一緒』て英語でなんていうか知ってるかい?
「With you」
これに一言付け加えて、うちの大事な家族に伝えて欲しいんだ
『With you forever』
完
作、龍翔琉(たつかける
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