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君と初めて出会った日は確か高校二年生の夏休みの最終日だった。
まだ蝉たちが「ミンミン」と激しく泣いている暑い夏の日。
俺はいつも通り部活の練習開始の三十分前くらいに来て一人で壁打ちをする予定だった。
先に部室の鍵を職員室に取りに行かなければならないので下駄箱で上靴に履き替える。
オレンジ色のラケットバックを地面に置いて上靴を取ろうとしゃがんだ時に、ピンク色のハンカチが地面に落ちていることに気がついた。
後ろを振り返るとボブくらいの髪の長さをした女の子がいたので「あの、このハンカチ違いますか? 」と声をかける。
女の子は俺の通う下柳高校の制服を着ていたが見かけたことの無い顔だった。
青色のスカートに白いカッターシャツ、胸元には青色のリボンが付いている。
女の子はスカートのポケットに手を入れ「あれ、ない」とつぶやいていた。
それから少し経って女の子は言った。
「あ、これ私のです。ありがとうございます」
「いえいえ! 」
ハンカチを女の子に渡して俺が職員室に向かって歩き始めた時だった。
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