初デート

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初デート

 家に着くと、すぐにシャワーを浴びて出かける支度を整える。  君と初めてのデート――どんな格好で行こうかな?  クローゼットの中にある、ディスプレイをそのまま購入した服が、いくつか並んでいる。  その中から、一番のお気に入りの服を手に取った。  僕は、コーディネートが苦手だから、店に飾ってあるディスプレイをそのまま買うことが多い。  そんな僕が鏡の前に立って、買ってから一度も着ていないお気に入りの服に袖を通した。 「似合ってるのかな……?」  自分ではその判断さえ上手くいかない。  それでも、せっかくのデートなんだ。自分の中の一番のお気に入りで行きたい!  時間はまだまだあるのに、僕はもう準備万端。  早く連絡が来ないかと、今か今かと待ちわびていた。  電話が掛かってくるのは朝方だと分かっているのに、眠れるわけもなくて、ドキドキする胸の鼓動が、静かな部屋に小さく鳴り響く。  君のことを考えるだけで、こんなにもドキドキするなんて自分でもびっくりだけど、それでもこれが僕が君を好きだという証拠。  だから、その鼓動さえも心地よく感じるんだ。  だんだんと窓の外が明るくなり始めた頃――スマホの着信音が鳴った。  僕はすぐ隣に置いてあったスマホを手に取り、通話ボタンをスライドさせる。 「はい」 「あっ、俺だけど……」 「うん。仕事、お疲れさま」 「ああ……お疲れ。今から出れる?」 「大丈夫だよ」 「そっ、じゃあ駅で待ってる」 「分かった。すぐ行くね」 「ああ」    スマホが切れる音が鳴り止むと、僕は急いで家を出て、君の待つ駅へと向かう。  明け方の気温は暑くもなく寒くもなく適温だった。  おかげで走っても汗だくにならずに済みそうだ。  だんだんと駅が近づいてくると、出入り口のところに人影を見つける。  背の高い、深く帽子を被っている男の人――それが誰なのかは、すぐにわかる。  迷うわけもなく、その人物へと向かって足を進めていく。
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