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「校長、何か話があると…?」
私が校長室に入ると、重苦しい空気が漂っていた。
「単刀直入に訊きます」
「…はい」
「あなたは、須藤先生と不倫をしていますか?」
「えっ──?」
「あなたと須藤先生が不適切な関係だと仰る方がいるの。抱き合っている写真も見せてもらったわ」
先生に抱擁された写真を持っている人物は限られている。
「それは、違います。そういう関係ではなく、同じ教師として励ましてもらって…」
「ここは学校です。生徒たちの目があることを、失念していたのかしら?それ以外にも、あなたがしつこく須藤先生に付きまとっていると聞きました」
「すべて誤解です。私と須藤先生はそのような関係じゃありません。私が先生につきまとっているというのも、その方の勘違いです」
「そうですか…分かりました。不快な思いをさせてごめんなさい」
田辺校長は、私に向かって頭を下げる。
誤解が解けて良かったと胸を撫で下ろしたが、すぐにまだ終わっていないと悟った。
顔を上げた校長が、厳しい目をしていたからだ。
「プライベートのことには口出しするつもりはありません。私はあなたのことを信じるわ。でも、今回は同じ学校の教員同士。もしこれが世間に知れてしまえば、生徒たちに多大な影響を与えます」
「…はい」
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