【浮気癖は治らない】

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「桜井先生、文化祭で演奏するバンドの件だけど」 「あっ、それなら了解は得ています。ご近所の方々も楽しみにしてくれているようで」 「さすが、手回しがいいな。この調子なら、来年度はクラスを持てるよ。桜井先生は生徒にも人気ぐあるし、僕もしっかり推薦しておくから」 「私なんかが…とはもう言いません。私も須藤先生みたいにクラスを持ちたいです」 「おっ、なんか変わったな?僕の指導の賜物か?」 「そういうことにしておきます」 2人で屈託なく笑い合う。 あれから2週間以上が過ぎ、奥さんが絡んでくることはなかった。 先生の態度にも変わりがないことをみると、どうやら夫婦仲は元に戻ったらしい。それを私が尋ねることは、金輪際ない。 私は自分のほうが須藤武司を幸せにする自信があるが、実際は違う。先生の隣には奥さんがいて、家に来てくれたのも、本当に責任を感じて心配だったから。 その妻が、私に虫入りのタルトを持ってきたとは知らないが、どうやらあれで気が済んだようだ。 私も腹が立って啖呵を切ってしまったものの、これ以上は関わり合いになりたくない。 須藤舞子の性根が腐っていることを知れば知るほど、先生をそこから救い上げたくなってしまう。 だからもう、放っておいてほしかった。 しかし、私の願いは無惨にも打ち砕かれる。
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