950人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも連れ添ってきた妻と、ただの副担任のあなた、どっちの言うことを信じるかしら?騒ぎ立てれば、あなたは妻から夫を横取りしようとする、頭のイかれた女ということになるわ」
「そんなこと…」
『ない』と言い切ることができない自分がいた。
「好きなひとに白い目で見られるなんてこと、望んでないはずよ。そうならないよう、ここで終わらせてあげるって言ってるの。この話はこれで終わり、いいわね?」
切り札を持っていたはずの私が、いつの間にか許してもらう側になっている。
これも、妻でないからか…。
妻であるというだけで、立場は天と地ほど違う。
けれど、この人の言う通りなんだ。
悔しいけれど、須藤先生は間違いなく妻の言い分を信じるだろう。なにか決定的な証拠でもあれば別だが──。
「もし例え言ったとしても、あなたのほうに気持ちが傾くなんてことは絶対にあり得ないわ。残念だけど、あなたが何をしたところで、武司はあなたに見向きもしないから」
それだけ言うと、舞子がゆっくりと立ち上がる。
「二度と私たち夫婦に関わらないで。このまま教師でいたいなら、よその旦那に目移りしないことね。武司に対しては今後、副担任以上のものは抱かないでちょうだい。もしそれを破るなら──」
破るなら?
最初のコメントを投稿しよう!