疑似家族

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 私は大勢の家族と暮らしている。  いわゆる大家族ってやつだ。 「起きなさいよ。いつまで寝ているの。いつまでも寝ていたら罰が当たるよ。そもそもお前が朝、起こしてと言ったんじゃないか。ほらほら、早く布団から出なさい」  口うるさい母親はもう老婆だというのに朝からテンションが高い。 「わかったよ、起きるから……」 「ごはん、炊けたよー!」  台所から妻の声がする。 「はいはい、今起きる、起きるから」  こううるさくちゃ寝てられない。おかげでいつも規則正しい生活を送れている。 「冷蔵庫、開けっぱなしにしないで。十秒ルールのカウントダウンを始めます。9.8.7.6……」  娘のマリは節約マニアだ。色々と口うるさい。 「わかった、わかった、今、閉めるから。いちいちうるさいなあ」 「節電は、大事です」 「はいはい、そうでした」 「掃除するから床に物を置かないでね。お願い」  カナが叫んでいるのが聞こえた。カナはマリと双子で、カナは掃除が趣味なのだ。 「わかった。ああ、そうだ。荘太、美濃部京子が主演のドラマを録画しておいてくれ」 「もう録画予約したよ」  荘太はテレビが大好きだから番組の情報に詳しい。流行りのドラマも、人気のあるアーティストも実は荘太に教わっている。  小学生の子供に「イマドキ」を教わっているなんて、て他人には口が裂けても言えないな。 「ほら、もう時間よ。あと五分」  母親の声が聞こえ、あわてて着替えた。  玄関で靴を履き、照明を落とすと奥から声がした。  「いってらっしゃい。気を付けてね」  バタン、ドアを閉じると鍵をかけた。
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