【序】疑命

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〜ヒルトン東京〜 1階にあるセント・ジョージ バー。 深夜1:30に自動ドアが開いた。 「来ると思ってましたよ」 バーテンの篠田(しのだ)が迎える。 カウンターには既にコースターが2つ。 カウンター内にあるスイッチで、店の外と店内の不要なライトを消し、ドアをロックした。 「いつもよりキツ目に?」 「いや、朝早く記者会見があるから」 「では、いつものにしますね」 手際良くジン・アンド・ビターズを作る。 最近莉里がハマっているカクテル。 アンゴスチュラ・アロマティック・ビターズを使用し、オールドファッションドグラスでロックにしたもの。 自分のものも作り、莉里の前に立つ。 「ダメでしたか」 「ああ、一か八かに賭けたけどね」 「明日は警察も入り、騒がしくなります」 「会合かパーティか?」 「傘下の業者を集め、会合後にパーティを…」 微妙な言葉尻で気をひく篠田。 そうと知ってて問う莉里。 「誰だ?」 「新龍会の謝皓然(シーハオラン)」 「いかにも怪しいな。まぁ…深入りはよそう」 「私もそうします」 いつも通りの優しい笑顔。 「サンキュー!一杯やって、マスターの顔見たら、何とか落ち着いたわ」 「くれぐれもお気をつけて」 チップ込みで、お代を払って出て行く。 (めんど臭くなりそうだな…) 携帯が鳴った。 (大臣か…しつこい奴) 睡眠モードに切り替える。 国交省大臣の谷原孝蔵。 闇の噂もチラつく権力者である。 余程慌てる理由があると見た莉里。 聞けば会見が難しくなると考え、無視した。 (フッ…私には関係ないこと) とは言え、会見は慎重にと、考えを巡らせる常盤莉里であった。
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