【残】疑念

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〜目黒区〜 高層マンションの27階。 疲れ切った顔でテレビを見ていた高嶺真純(ますみ)。 その横でスマホを操作している志穂。 「何あの態度。腕がいい院長らしいけど、本当にミスは無かったのか、怪しいものね」 「まぁ父も彼女の警告を無視して、入院しなかったんだから、自業自得…かな」 「死んじゃうなんて、これじゃ何のために妊娠したのか…」 「おい、それはどう言うことだ?」 思わずこぼれた本音。 さすがに、聞き逃せない真純。 「お前が男の子に(こだわ)って、色々試してきたのは、俺の為じゃなくて、相続目当てだったのか⁉️」 志穂と婚約してから、軽い気持ちで、男の子が欲しいと話していた真純。 しかし、最初に授かったのが女の子と分かっても、それはそれで喜んでいた。 「チッ…そうよ! 最初の子が女の子と知った時の寛三(アイツ)の目。あなたは何も知らないでしょう❗️」 寛三の死で計画が狂い、開き直った志穂。 信頼を失った感情は、さらに堕ちて行く。 「ま…まさか、事故を起こしたのも?」 女の子と分かって直ぐ、志穂は飲酒運転で自損事故を起こし、その事故により流産した。 何も答えない志穂。 それを…認めたものと確信した真純。 「なんて女なんだお前は…人殺しめ❗️最初から、俺に近付いたのも、全てそれが目的か❗️」 宗治ほど、イケメンとは言えない真純。 クラブでも、あまり女性は寄り付かなかった。 そこへ近付いたのが、店でNo.1の志穂。 「あ〜あ、全く。酷い言われ様ね。あなたの為に、お得意先を接待したり、本社の中にも味方を作ってきてあげたのに。あなたの力だと思ってたの? 昨日も本当は、本社の人事部長さんと予定だったのよ…」 急な呼び出しで、空振りをした志穂。 どういう付き合いかは、考えるまでもない。 「お前って奴は❗️……ん?なん…だ?」 テレビ画面を見つめて、固まっている志穂。 「あなた…あれ見て。速報のテロップ❗️」 「また地震か?……えっ?…何っ⁉️」 駒倉の会見が続く画面に、速報が流れた。 会見場も慌ただしくなっていく。 突然、画面がスタジオに切り替わった。 JAPAN-TV の人気報道キャスター、柴咲(しばさき)希美(のぞみ)が、深刻な表情で伝える。 「会見の途中ですが、たった今入った情報によると、大田区田園調布にある、高嶺宗治の自宅で爆発があったと言うことです。……あ、今現場近くで撮影された動画が、SNS上にアップされた様です」 スタジオの中も、慌てているのが分かる。 「その映像をご覧ください」 少しの間が空いて、戸惑う柴咲。 その時、映像が切り替わった。 「なんてことだ…兄さん」 爆煙と炎が立ち昇り、大邸宅の姿は既にない。 近隣の住民の悲鳴が聞こえ、たくさんのスマホが向けられている。 「確認が取れました。やはり爆発したのは、亡くなられた、高嶺ワールドトレーディング、高嶺寛三(ひろみつ)社長の長男、高嶺宗治さんの自宅で、家には宗治さんと妻の貴子さん、そして5歳の司咲(つかさ)さんの3人が住んでおり、生存や行方については、まだ不明だと言うことです。繰り返します、高嶺……」 「バカな…」 「あなた、電話を❗️」 真純(ますみ)もスマホを掴んではいた。 …だが、炎の中に覗く2台の車。 絶望感が、冷たい汗となって体を伝う。 「いったい…何が起きてるんだ…クソッ❗️」 最悪の事態に、スマホを投げようとして、ふと…志穂の異常に気が付いた。 「あなた…痛いっ!…あなた助けて!」 その場へ崩れ、気を失った志穂。 脚の間から広がる水。 (破水⁉️何で…まだ早い❗️) 慌てて救急車を呼ぶ真純。 「シッカリしろ! 志穂!」 バスタオルを重ねて敷いて下半身を載せ、担ぎ上げて裸足のまま出て行く。 丁度下りてきたエレベーターが開く。 スーツ姿の女性が1人。 「まぁ、大変!」 お腹と状態を見て、破水と分かった彼女が、直ぐにドアを閉める。 「ありがとうございます」 「ご主人、落ち着いてください。破水は、ただの生まれるサインですから」 早産であるとは知らない。 「車は?良かったら私が…」 「いえ、救急車を呼びましたので」 1階に着くと、もうサイレンの音が近付いて来ていた。 先に立ち、ドアをあける彼女。 「親切にありがとうございました」 「いえ、お気をつけて」 (えっ?) 救急車が到着し、手際良く運び込む救急隊員。 「乗ってください」 「あ、は…はい💦」 ドアが閉まり、病院へ向かい始める。 それを見送る彼女。 その横にダークグリーンのBMW が停まった。 BMW i4 M50 X KITH(世界に6台の限定車) d07e3080-7551-4cba-b0c5-2e4da83645ad
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