老人の家からは幸せな鳴き声が聞こえる

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「ここにいる子たちはね、みんな人間に酷い目に遭ってきたんです。ですからね、ここではなるべく自由に、そして、もしも叶うのであれば、幸せを感じて生きていってほしい、そう願っているんです。もちろん、彼女にも」  そう言って、老人は膝の上でくつろいでいる彼女の顎の下を優しく撫ぜた。ゴロゴロ、と喉が鳴った。 「ここには、他にも?」 「ええ。猫は彼女を入れて六匹、犬は三頭。とかげとへびが一匹ずつ。犬は今、庭を駆け回ってますよ、今日は天気が良いし、みんな仲が良くてね。後のは夜行性なものだから、日の出ているうちはケージの中で眠っていますよ」  老人が椅子の手すりに手をかけると、膝の上の彼女はさっと床に下り立ち、こちらを睨めつけてからふいとどこかに行ってしまった。  老人はゆっくりと立ち上がると、リビングのカーテンを開け放った。 「あの、毛の白いのがマメ、足の一本ないのがコーン、ボールを咥えているのがハルキチです。ここに来た当初はみんな、とても怯えていたものですがね、今は表情も明るくなって」 「あの、」 「はい?」  老人は皺だらけの顔にさらに皺を寄せた。 「い。いえ、何でもありません」  穏やかな笑みを湛えて彼らを見つめる老人に、恐ろしくてそれを問うことはできなかった。  だって、どう見たって。  彼らは人間ではありませんか?
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