さらに後日談

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さらに後日談

俺はごく普通の若手の化学者。特に優れた研究テーマがあるわけでもない。その他大勢のひとりだ。そんな俺にもひとつだけ悩みがある。それは白髪だ。年齢と共に髪が真っ白くなった。アニメに登場する化学者のようにも見え、ハカセと呼ばれるのは嬉しい気もするが…。 そんな劣等感満載の俺とは違い、隣のラボには優秀な若手化学者がいる。そして、そのラボで白髪染めの薬を開発したという噂を聞きつけた。昨夜、俺はこっそりと隣のラボに忍び込み、その薬を盗み出した。 たくさん置いてある薬の中から、なんで白髪染めの薬が分かったのかって? それは簡単なことだ。瓶に『黒く染める飲み薬』とラベルが貼ってあったのだ。もはや白髪染めに間違いないだろう。 俺は瓶を開けて薬を飲む。そして、鏡を見ていると、真っ白の髪の毛がだんだん黒く染まっていく。 「スゴイ黒さだ。俺の腹の中でさえ、ここまで黒くないぞ。実に素晴らしい。こんな白髪染めが欲しかったんだ!」 この薬こそ、Drクロが本人の意図とは全く関係なく、偶然に開発した『カツラに見えるほどの怪しい黒さに染める、絶対に色落ちしない白髪染めの薬』であった。
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