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「そっか……同じ検査部の人だもん、仕方ないよ。冬くんと私の関係を勘付かれても困るしね。誰かに言われて思ったけれど、やっぱり一緒に歩いているだけで噂になっちゃうんだね」
「ああ、そうだな……自分が働いているところながら、本当に恐ろしい病院だよ」
仕事が終わって凛と一緒に帰ると、そのまま凛のアパートに2人で向かっていく。夏実先輩とのことを正直に打ち明けると、意外にも凛はオレを責めることはなく、夏実さんと2人で飲みに行くことを了承してくれていた。
凛の話を聞くと、どうやら凛の方も病棟の人たちに聞かれることが多くなったらしい。一緒に通勤しているオレに対して、少なからず好奇心を持っているようだった。凛は気にすることなくあしらっていたようだったが、出来ることなら目立ちたくないという気持ちは、オレと同じだった。
「野村さん……だよね? 冬くんの先輩の臨床検査技師の人って。何度か見かけたことがあるけど、とても綺麗な人だよね。色んな先生と関係を持っているって噂で聞いたことがあったけど、実際はどうなんだろうね」
「所詮は噂だから正確性には欠けるけど、火のないところに煙は立たないって言うからな。たぶん、目撃した人がいるってことじゃないかな。夏実さんが医師と街中を歩いているのを」
若手の医師からベテランまで、夏実さんと一緒にいたと噂されている医師は何人もいた。どれが本当で嘘なのかは分からないが、少なくとも夏実さんが絡んでいることは間違いないだろうと思う。
しかし、当の本人はそんな噂など全く気にしていない様子であり、仮に問い詰められても飄々と躱すことが出来るだろうと思った。だからこそ、こうしていくつとの噂が飛び交っているのだろうと思った。
「もしも、野村さんに勘付かれている可能性が高いとしたら……もう冬くんと一緒に通勤しない方が良いのかな?」
「凛が痴漢にまた遭遇しないとも限らないけど……変な噂を立てられるくらいなら、オレたちは別に何でもないということを証明した方が良いのかもしれない。けど、いきなり別々に通勤し出したら、それはそれで不自然に見えるかな」
「そっか、そういう考え方もあるね。じゃあ、どうしたら良いんだろうね……」
オレが思うに、夏実さんはかなりのやり手だと思う。今までこのようなことを何度も経験して来たような雰囲気は、オレと凛の関係性を疑ってかかるには十分だったかもしれない。
オレに話しかけて来たタイミングからも、夏実さんが何かを狙っているような気がしてならなかった。
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