第4話:幼なじみからの脱却

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「日下部くん、急に呼び出してしまってすまなかったな。知っているとは思うが、一応自己紹介をしよう。オレは消化器内科で医師をしている瀬川だ。そして、こっちはオレの妻である結衣。反対側のこっちにいるのが、オレや皆川の同期である循環器内科医師の中条だ」 「初めまして、で良かったわよね? 何度か病院内で見たことはあると思うけど、こうして話すのは初めてだったと思うから」 「俺は前にあったことがあるから覚えてるだろ。まさか、忘れたとか言わないよな?」  瀬川先生が桐ヶ谷さんと中条先生のことを紹介してくれる。そんな2人に、オレは小さく会釈をした。  桐ヶ谷さんも瀬川先生とは同級生だという話を聞いたことがあったので、ここにいる人たちは全員同期入社ということになる。メンバーの顔ぶれを見ると、とても豪華な印象を受けた。 「呼び出された理由も分からないで連れて来られて、困っているだろう? 実は、隣にいる皆川や、中条の提案で今日のプランを立ち上げたんだ。日下部くんが困っているという話を受けてね。うちで良ければ使ってくれて構わないという話をしていたんだ」 「皆川さんと中条先生が……?」  首を傾げながら2人を見ると、皆川さんは少し神妙な面持ちで頷き、中条先生は面倒くさそうな表情をしながら頬杖をついていた。 「お前が彼女とケンカしたって話を聞いたんだよ。まったく、一体何をしたのかと思えば、同じ部署の先輩にハメられたって? アホかお前は」 「な、中条。もう少し順を追って話そうじゃないか。いきなりだと日下部くんが混乱するだろ」 「おう、そんなに難しい顔すんなよ。こっちにいる瀬川先生様がめちゃくちゃ分かりやすく説明してやるからよ」 「中条……お前、本当にそう思ってるか?」  皆川さんが中条先生を宥めていると、瀬川先生が難しそうな表情をしながら口を開く。  中条先生から凛の名前が出たとき、オレは内心落ち着いていられなかった。何とも言えない焦燥感に駆られていたのを、きっと瀬川先生たちは気付いていたと思う。そして、どこまで情報が来ているのかと、固唾を飲んで瀬川先生の話に耳を傾ける。
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