第4話:幼なじみからの脱却

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「しかし、あの野村さんがこんなことをするなんて信じられないな。彼女は検査課ではかなり仕事が出来ると評判で、人当たりも良い。実際に日下部くんが新人だった頃は、彼女が指導係として色々と教えていたんだ。それが、どうしてこんなことに……」 「いや、皆川には悪いが、野村ってやつの評判は違った意味で俺のところにまで届いて来てるぜ。うちの循環器の部長とも関係を持っているって噂を聞くし、他にも不特定多数の医者が野村の虜になってるとか聞くけどな。そこら辺は何か聞いてないのか?」 「いや……俺の耳にはそういった情報は入って来ていないが、瀬川や中条の耳にまで入っているということは、それなりに信憑性のある話なのだろう。未だに信じられないが、そうなのか……」  後輩である夏実さんが不倫や浮気を不特定多数の医師としていたことに驚きとショックを隠し切れないのか、皆川さんは小さくため息をついていた。 「残念だけれど、その野村って女の人の評判は色々なところに届いてるみたいね。真相は分からないけれど、これだけ多くの人が知っているということは、少なからず事実なところもあると思うわ。でも、それだけ噂されてもブレないところを見ると、かなりのメンタルだと思うわ。まあ、分かってやっているとは思うけど。皆川さんや日下部くんには悪いけど、仕事の良し悪しとプライベートは必ずしも比例しないわね。ここにも、見た目や言動が怪しい医者がいるけれど、中身は良い人だもの。早川係長が惚れるだけはあると思う」 「おい、今俺の悪口を言わなかったか? いや、そんなことは今はどうでも良いっ! 早川さんは美人で性格も良いっ! 仕事も出来るし、見た目や言動と一致している人の代表的な存在だよな! お前もそう思うだろ? なっ!」 「背中を叩くな、背中を。まあ、早川さんがお前と付き合っているのはまだ信じられないけど、聞いた限りではお前のことをちゃんとフォローしてくれてるみたいで安心してるよ」  早川さんという人と付き合っているらしい中条先生は、早川さんの名前が出ると頬を綻ばせて機嫌良さそうに瀬川先生に絡んでいる。  院内で付き合っている人がいる者同士、色々と通じるところがあるようだった。だからこそ、こうしてオレや凛のことを気にかけてくれているのだろうか。
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