第4話:幼なじみからの脱却

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「……七瀬さんという人と話したのは初めてだったけれど、とても芯の通ってる人だと思ったわ。本当にあんたのことを信頼しているのが伝わってきた。あんたに対する彼女の思いを無駄にするのかどうか、あとはあんた次第だと思うわ。正直、あんたみたいなやつに彼女はもったいないと思うけど」 「ゆ、結衣……お前も相変わらず厳しいな」 「まっ、残念だけどそう思われても仕方ねぇだろ。これからあいつとどうすんのかは、お前次第だってことだ」 「…………はい」  2人からの叱咤激励を受けて、オレは少しずつ気持ちを落ち着かせる。これほどまでに取り乱して感情を露わにしたのは初めてだった。  凛は普段からあまり感情を表に出したりしない性格だった。穏やかな人柄で、周りに合わせて自分の色を変えることの出来る、とても起点の利く人だった。そんな凛がそれだけのことを言ってオレのことを信頼してくれていたのだから、オレも腹を括らなくてはならないときが来たようだった。 「あとは、君たち次第だということかな。日下部くんと七瀬さんがどんな結末を迎えたとしても、俺は今まで通り普通に接するから心配するな。あと、野村さんのことはしばらく日下部くんから遠ざけておこう。彼女、自分の仕事が終わると日下部くんのところに行きたがるから、そこは課長と話をしておくよ」 「皆川さん……ありがとうございます。それに、瀬川先生たちも……」 「仮に七瀬さんと仲直りをして、野村さんを退かせることが出来たとしても、今後も同じようなことが起こりうるかもしれない。どこで誰かが見ているか分からない以上、常にというのは難しいかもしれないが、警戒を続けなくてはならない。オレが思うに、野村さんという人も、あれはあれで何か深い闇を抱えているような気がするからな……まあ、日下部くんなら心配ないと思うが。人は誰しも過ちを犯すものだ。そこから自分をどうやって変えていくか、どうやって向き合っていくか、それを考えながら七瀬さんと話をしてみて欲しい」 「……分かりました。決して許されることだとは思っていませんが、1度凛と話をしてみようと思います」  オレのことを励ましているかのように、隣に座っていた皆川さんが、オレの肩を数回そっとタップした。
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