第4話:幼なじみからの脱却

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「七瀬さんと日下部くんは幼なじみだと聞いていたよ。それならば、オレたちが口を挟むことなんて出来ないくらいの、2人の絆があるんだと思う。七瀬さんが日下部くんのことを許そうと思ったのは、きっと今までの積み重ねがあったからだろう。そうでなければ、付き合って早々にこんなことをされては、別れられても不思議ではないだろうから」 「はい、そうです。冬くんは昔から優しい人でしたから、周りに困ってる人がいると放っておけないような性格だったんです。きっと、私は冬くんのそういうところに惹かれたんだと思います」 「損な性格してるわよね。それで今回みたいにハメられたんでしょ? 今後も同じような手口で誘惑してくるのが目に見えてるじゃない。またホイホイと付いていくわけ?」 「いえ……夏実さんとは、もうあれっきりです。また同じように来たとしても、もう誘いに乗ることはないと思います」  夏実さんのことを信じていたからこそ、オレ自身が受けていたショックも大きかった。  夏実さんが不特定多数の人たちと関係を持っていたのは噂で聞いていたけれど、オレには夏実さんがそのようなことをするような人には見えなかった。桐ヶ谷さんが以前に仕事とプライベートでは別物だと言っていたような気がするけれど、おそらくそうなのだろうか。 「でも、あんたが七瀬さんと付き合ってるってことを知ってるわけでしょ? それで周りに言いふらされたりしたら、ものすごく面倒なことにならないかしら? あの様子から見るに、その野村って女、色んな部署に知り合いがいるはず。周りに言いふらされたりしたら、それこそ瞬く間に噂が広まっていくわよ?」  「それなんですが……そのときは胸を張って凛との関係性を周りに打ち明けようと思います。決して恥ずかしいことをしているわけではないのだから、自信を持って凛と付き合っていることを伝えます」 「えっ……!? ほ、本気なの!? あんたたち、この病院のネットワークの広さを分かってるでしょ? なのに、何でそんな……!?」  驚きを隠せずに目を見開いていた桐ヶ谷さん。おそらく、この病院で働いている者からすれば正常な反応だったと思う。それだけ、オレと凛の選択はリスキーだった。
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