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「日下部くんたちは、きちんと自分たちのことを考えながら動いているし、自分たちからそのようなミスをするとは思えないからな。それに、日下部くんは1度大きな失敗をしている。それを経験した人間は強くなるものさ。オレたちだってそうだっただろう?」
「それはそうだけど……まったく、今度はちゃんと彼女のこと守りなさいよね。同じようなことしたら、絶対に許さないんだから」
「は、はい」
厳しい視線を桐ヶ谷さんから向けられ、オレは緩んでいた背筋を伸ばし直す。そんなオレを見て、瀬川先生は苦笑いを浮かべていた。
「これでも、1番君たちのことを心配していたのは結衣なんだよ。うちの病院の噂好きという風潮を良く知っているから、それだけ2人のことが心配だったんだよ。厳しいことを言っているけど、本当はかなり心配していたんだぞ?」
「ちょっ、ちょっと!? 変なこと言わないでよ!? 私は別にっ……! お、怒るわよ!?」
唇を尖らせた桐ヶ谷さんは、瀬川先生のことを何度も叩いていた。それなりに力がこもっていたので、瀬川先生は慌てながら桐ヶ谷の手を受け止める。
瀬川先生と桐ヶ谷さんのやり取りを見ていたオレたちは、お互いに顔を見合わせて頬を綻ばせた。
「ありがとうございます。瀬川先生、桐ヶ谷さん」
目の前で微笑ましい夫婦仲を見せていた2人に、凛が深々と頭を下げていた。
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