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「いらっしゃいませ~あ、葉山さん。また来てくれたんですね」
「おはようございます。いつものを」
退職して暇になった私の日課は、こうして近所のカフェでモーニングサービスを食べることだ。
いつものように私を迎えてくれた従業員の千佳子さんは、いい人だ。私と同じ初老ぐらいの女性だが、優しげな雰囲気を出している。こういったタイプを「癒し系」と言うのかもしれない。
だが、私はその素顔を見ることができない。人の顔を認識することは自分にとって、とても難しいことだった。
──何故なら、すべての人間に「蛾面」という仮面がついているから。
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