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⑽
「あの、梶山君は……?」
三人の男たち――トオル、コージ、タクに囲まれて戸惑っているのは、千早だった。
「梶山?……来ないよ、そんな奴」
トオルがせせら笑うと、千早はまなじりを吊り上げて「騙したのね!」と叫んだ。
「そういう言い方は心外だなあ」
不敵な笑みを浮かべながら階段を降りてきたのは、舘岡だった。
「やっぱりあなたが後ろで糸を引いてたのね。……卑怯者」
「ふん、そう言う気の強さは嫌いじゃない……」
舘岡が千早の前に来ると、タクたちがさっと動き、千早の腕を左右から縛めた。
「……何する気?」
「あんたが自分の置かれた状況をわかっていないようだから、教えてやるんだよ」
舘岡は吐き捨てるように言うと、右手で千早の胸を鷲掴みにした。
「やっ……やめてっ!」
僕は思わず「やめろ」と叫びそうになった。だが、叫んだところで離れた場所にいる連中の耳に届くはずもなかった。
「あんた、同情と恋愛の区別がついてないんだよ。男慣れしてないから、あんな不細工な奴と付きあっちゃうんだ」
舘岡は千早のブラウスに手をかけると、一気にボタンを引きちぎった。
「やめて……あなた自分のしてることがわかってるの?犯罪よ」
「ほう、わかってきたじゃないか。そういう顔が男を興奮させるんだよ」
舘岡は露わになった千早の肌を舐めるように眺めると、ブラジャーをむしり取った。
「いや……」
僕は初めて見る白い胸元にどぎまぎしながら、脳味噌が怒りで煮えたぎるのを感じた。こんな奴、生かしておく価値もない。
「なに、今に気持ちよくなるさ」
舘岡は怒りでわなないている千早の身体を弄ぶように撫でまわすと、いきなりスカートの中に手を滑りこませた。
「やめて、お願い……」
「そうだ、そうやって少しはお願いすることを覚えなきゃな。なに、今は嫌かもしれんがそのうち俺を欲しがってお願いするようになるさ」
舘岡がさらにその先に進もうとした瞬間、ヴィジョンが消えて周囲に路地の風景が戻った。
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