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「けっ、変な格好しやがって。ここは通すなって言われてるんだよ」  ライダースーツの若者は脅しめいた口調で言うと、手にした金属棒を僕に向かって突きつけた。 「では、勝手に通らせてもらう」  僕が威嚇に動じないと悟った若者は、仲間に目で「どうする?」と問いかけた。 「早くバイクを避けよ。でなければ身の安全は保証できない」 「なんだと……これ以上進んだら怪我をするのはあんたの方だぜ」  脅しを無視して進もうとする僕に、若者は金属棒をつきつけて凄んだ。 「無駄だ。死にたくなければ去れ」  僕の口が警告めいた言葉を発した瞬間、目の前に「使用可能な装備 ナイフ」という表示とともに刃物のアイコンが現れた。 「――ふざけるなっ!」  ニキビ顔の若者が金属棒を振り上げた瞬間、若者の右腕が付け根からすっぱりと消え失せ、棒を持った腕が路上にごろりと転がった。 「あ、ああ……なんだ?」  右腕を失った若者が僕を見た直後、今度は左足が付け根から切断され、バランスを崩した若者は地面に倒れ込んだ。 「あーっ!ああああっ」  肩口と大腿の付け根から大量の血を噴き出しながら、若者は横たわったままびくびくと痙攣を始めた。僕の右手首から「生えて」いるナイフが、若者から一瞬で手足を奪ったのだった。 「なっ……何だお前はっ」  凄惨な光景を前に大半の仲間が逃げ惑う中、一人の若者が後ずさりながら僕の前に立ちはだかった。 「い、意地でもここは通さねえぞ」  釘のついたバットを手に入り口の前で抵抗する若者に、僕は「無意味だ」と言い放った。 「ぶ……ぶっ殺……うわああっ!」  振り上げた手からバットと共に落下したのは、五本の指だった。 「い、痛いいいっ!」 「足が残っているうちに去れ」  僕が無感情に告げると、若者は血の噴きだす傷口を抑えながらそそくさと逃げだした。  僕は入り口を塞ぐように停められたバイクをどけると、血しぶきのついたドアノブに手をかけた。  ――もう止められない……本契約なんてすべきじゃなかったのかもしれない。    本来の僕は人を殴ったことすらないのに、この「身体」は人を殺めることもいとわない。  これが望んでいた「力の行使」なのか?僕は依頼主である僕の気持など一切、顧みない「グラスクラッカー」と共に倉庫の中に足を踏みいれた。
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