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⒀
倉庫に足を踏みいれた僕の目に真っ先に飛び込んできたのは、衣服を剥ぎ取られ全裸に近い格好で床に組み伏せられている千早の姿だった。
「ん?……なんだあ?」
人の気配を感じたらしい舘岡が振り向くと、千早の手足を押さえつけていた取り巻きたちも一斉に僕の方を振り返った。
「おかしな格好だな。……あんた、どうやってここまできた?」
「契約を遂行しに来た。覚悟せよ」
「ふん、こっちは今、取り込み中なんだ。間違って紛れ込んできたんならとっとと出て行きな」
「今している行いをすぐにやめよ。でないと命の保証はない」
「面白いことを言うじゃねえか。ヒーロー気取りのつもりか知らんが、怪我したくなかったら黙って見てるんだな」
「やめる気はないのだな」
「当たり前だ。……あんただって、興奮するだろ?」
舘岡はそう言うと、取り巻きに命じて千早の両脚を広げさせた。
「――いやあっ!」
千早の股間は恐怖のせいか濡れて光っていた。僕は自分の押し込められていた怒りが「グラスクラッカー」の中で爆発し、燃え上がるのを意識した。
「……全滅を実行する」
僕が地の底から響くような声でそう告げると、目の前にナイフのアイコンが現れて手首から先が変化した。
「全滅だと?……何言ってんだ、てめえ」
「やろう、俺が黙らせてやるぜ」
タクがひと声吠えると、床に落ちていたバールを手に僕に飛びかかってきた。タクの獣のような目と千早の目尻に浮かぶ屈辱の涙を見た瞬間、僕の持つナイフの刃先が伸びた。
「……一人目」
振り降ろした武器が空を切った瞬間、タクの身体を僕のナイフが肩口から心臓に向かって切り裂いていた。
「あ……」
裂けた肺から鮮紅色の血が大量に吹き出し、タクはそのまま前のめりに倒れた。
「な、なんてことしやがるんだこいつ……」
僕の容赦ない一激を、舘岡は血の気が引いた顔で呆然と眺めた。
「あんた自分のしたことがわかってるのか?殺人だぞ!」
「いやあああっ!」
凄惨な光景を目の当たりにした千早の絶叫に僕の手が一瞬止まった、その時だった。瓶を叩き割る音が聞こえたかと思うと、コージが突進して来る姿が見えた。
思わず身構えた瞬間、目の前に「銃」という文字と武器のアイコンが現れ、手首から先が黒い銃身に変わった。
「――死ねえ!」
「……二人目」
轟音が立て続けにこだまし、僕の顔面に瓶を突き立てようとしたコージは次の瞬間、額と胸に黒い穴をあけて仰向けに倒れた。
「……ぶはっ」
かっと目を見開いたまま絶命したコージを見たトオルは「ほ、本当に殺しやがった」と呟き顔を背けながら後ずさった。
「馬鹿、ひるむんじゃねえっ。正当防衛だぞ、逆に殺っちまえっ」
二つの死体を前に固まっていたトオルに、舘岡が白い顔のまま檄を飛ばした。
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