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 僕の身に最悪ともいえるトラブルが降りかかったのは帰宅の途中、コンビニの前を通り過ぎた時だった。人通りの多い道から路地へと一歩入った途端、複数の人影が僕の行く手を阻むように立ちはだかっているのが見えたのだ。 「えっ?」  道を塞いでいる連中の顔ぶれを見た瞬間、ぼくの全身を警戒警報が駆け巡った。  ――トオル、コージ、タク……こいつら舘岡の取り巻きだ! 「通してくれよ」  俺が連中の間をすり抜けようとした瞬間、ひょろりとしたタクが「おっと」と言って僕の脛を払った。 「――痛っ!」  つんのめった僕はそのままアスファルトに叩きつけられ、坊主頭のコージがその背を容赦なく踏みつけた。 「や……めろ」  僕が潰れた肺を喘がせながら抗議すると、二人がかりで身体を起こされ鳩尾に拳を叩きこまれた。 「――ぐっ」  身体を二つ折りにして呻きながら、僕はこいつら喧嘩慣れしてないなと思った。上手い奴ならもっと深いところに決めているはずだ。 「いい加減に……しろ」 「なんだあ?聞こえねえな」  咳き込んでいる僕の尻をトオルが蹴りあげ、僕は再びアスファルトに這いつくばった。 「僕が怪我をしてラインが止まったら……困るのは君らのボスの方だぞ」 「ふん、わかってねえな。……お前の代わりなんていくらでもいるんだよっ!」  僕のかたくなな態度が連中の凶暴性に火をつけたのか、三人は倒れている僕の周囲を取り囲むと顔や体を代わる代わる蹴り始めた。 「――ふう、さすがに飽きてきたな。足がだるいぜ」  打撃が次第に決まらなくなり、息が上がった三人は「誰にも言うなよ」と釘をさすとどこへともなく立ち去った。  ――結局、僕と言う人間はこうなってしまうのか。  僕が屈辱を噛みしめながら体を起こした、その時だった。 「君、ずいぶんと ひどい目に遭ったみたいだね」  ふいに近くで声が聞こえ、顔を上げると身を屈めてこちらを見ている小柄な男性が目に入った。 「僕もやられっぱなしだったことがあるよ。散々殴られたのに、手も足も出なかった」 「あなたは……」 「君、怨念が溜まっているようだね」 「怨念?」  童顔だが年齢のよくわからないその男性は、哀し気な目なのに唇には薄い笑みをたたえていた。
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