遠く、どこまでも遠くへ

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 二人きりで会うのは初めてだったわけだし、かなり緊張していたはずだ。綺麗な顔をしていたし、そんな子が俺に興味を示してくれていることに驚きを隠せなかった。   再会した日以来、何回か会うようになった。確か水族館にデートへ行った日、告白されて付き合うことになった。容姿が平凡以下の俺に興味を示すなんて何か裏があるんじゃないかと最初は勘ぐっていた。  テレビ業界にいる俺のコネを使って、有名になろうとしているんじゃないかとも考えた。取り柄もない俺と付き合うメリットなんてそれくらいしかないと思っていたから。  けれど、付き合ってから一週間ほどで、彼女は『アイドルやめようかな』と俺に打ち明けた。そこで俺は疑っていたことを恥じた。彼女の言葉は嘘だったわけだけど。  当時の俺はそんなことに気づかず、彼女のことを一層好きになっていた。この人と結婚するのだと思っていた。  付き合ってすぐに俺たちは2LDKのマンションで同棲を始めた。  幸せの絶頂だった。しかし、そんな幸せも長くは続かなかった。いや、続けることなんてできなくなった。
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