遠く、どこまでも遠くへ

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 彼女が用事で、家を空けたときがあった。リビングでテレビを見ながら、暇を持て余していると、彼女の部屋から着信音が鳴り響いていることに気がついた。  俺のスマホではないし最初は無視したのだが、再度かかってきたので、俺は彼女の部屋の方へ向かい、ドアノブに手をかけたときにある忠告を思い出した。 『お互いの部屋には無断で入らないようにしようね。見られたくないものもあるだろうし』  同棲を始めた日に、そんなことを言われた。あのときの表情は少し怖かった気がする。  俺は別段見られて困るものもなかったし、どちらでも良かったけれど、彼女がそう言うのならそうしようということで、部屋に勝手に入るようなことは今まで一度もなかった。  俺はその忠告を思い出し、ドアノブから手を離したが、着信音は鳴り止まない。緊急性を要するものだったら、なんとかして早く彼女に知らせた方がいい。俺はそう思って、罪悪感を抱きつつも再度ドアノブに手をかけて、部屋に入った瞬間、今度は俺のスマホが鳴った。  電話に出ると、が聞こえた。 『宅急便を受け取っておいて欲しいの──すぐに帰るね』  そんな内容だったと思うけれど、正確には覚えていない。だって、スマホを忘れていったはずなのに、から電話がかかってきたのだから。
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