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プロローグ
それはある昼下がりだった。
地平の果てまで続く湖。そんな広大な片隅で、彼女は今日もいつもの場所で待っていた。
岸に上体を預けながら、浮かない顔で項垂れる。きっと今日も彼は来ない。そう分かっていても彼女は待っている事しか出来なかった。そしてそんな彼女の抱える憂いは、待つことしか出来ない退屈だけではない。
(また、言い過ぎちゃった)
しばらく会えない。だというのに最後には喧嘩別れをしてしまった。
嫌われてしまったのではないか。そんな不安が彼女に重くのし掛かっていた。もしかしたらこのままもう来ないかもしれない。そう思うとはち切れんばかりの後悔が彼女の目から溢れた。
ザッ
久しぶりの足音。彼女はハッとして体を持ち上げながら岸に背を向ける。そして瞼に貯えたものを払いながら、振り返り告げた。
「お帰り! 言ってたよりも早かったか……な?」
彼女が振り返る先にあったのは、それまで何度も願った光景とはまた別のものだった。
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