拝啓 あなたへ

『拝啓　あなたへ』

　一雨ごとに秋の訪れを感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
　まずは連絡が遅くなったことを謝ります。あなたもご存じの通り、しばらくの間、慌ただしい日々が続いたのです。
　しかし、安心してください。私の気持ちは、一瞬たりともあなたの側を離れることはありませんでした。
　そうそう、引っ越しをされたのですね。あなたもご存じの、優秀な彼が教えてくれました。出来れば、あなたから直接聞きたかったのですが仕方ありません。ああ、誤解しないでください。決して怒っているわけではないのです。

　あれから、あなたと心の行き違いがあってから…早いもので１年が経ちました。その間に私も心境の変化があったのです。
　どうしてもっと寄り添ってあげられなかったのだろう、もっとあなたの気持ちを汲み取ってあげられていたら…と、来る日も来る日も考えました。今更遅いよ！なんて、あなたは笑うでしょうか。きっとこんな私だったから、あなたはあんな態度をとったのでしょうね。
　でも、もういいのです。お互い水に流しましょう。そしてまた、イチからやり直せばいいのです。

　９月４日、１８時。２人の思い出の公園で待っています。私は、あなたが初めて褒めてくれた茶色のシャツを着ていきます。
　あなたのことですから、別にわざわざ書かなくても直ぐに私を見つけてくれるとは思います。しかし、不本意ながらあのような場所にいたものですから、私も少し変わってしまったようなのです。あなたを責めるつもりは毛頭ないのですが、やはり刑務所には二度と行きたくないものです。
　さて、この先は当日の楽しみに取っておきましょう。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛を込めて　　斎藤　一

　「今日未明、若い女性の遺体が発見されました。警察の調べによりますと、女性は複数回に渡り殴られた形跡が見られ、怨恨の可能性を視野に捜査を進めていくとのことです。なお、女性には過去ストーカー被害を訴えた記録があり、そちらの線でも捜査を進めていくとのことです。…続いて、明日のお天気は」