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父の会社は時代の波に乗り大きく成長したので、父も兄もどんどん有名になっていった。
一卵性の双子なので顔はそっくりなうえに体型も同じなのだが、眼鏡にぼさぼさの髪で昆虫の研究に没頭している僕を見て、爽やかな笑顔で雑誌に載る兄と結びつけるものは誰もいない。
はじめのうちは兄とこっそり連絡を取っていて、それなりに頻繁に会っていたが、お互い忙しくなりに大学を卒業してしばらくたったころに連絡が途絶えた。
きっと兄は僕が今何をしているのかも知らない。
結婚に全く興味のなかった僕だが、28歳を超えたころから母のあからさまなせっつきがひどくなってきた。
仕事に生きがいを感じていた僕は、恋愛にさえ興味がなかったのにだ。
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