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「早苗ちゃんも、瑛人くんも結婚したのに」
年下の従兄妹の名前を挙げられてうんざりする。
兄も結婚するのに、本当はこう言いたかったのだろう。
母は興味がないふりをしながらも兄の情報を追い続けていた。
父に対抗心を燃やしていた母は、兄より僕を幸せに育てたいと強く望んでいたのだ。
女手一つで苦労して育ててくれた母には感謝しているので、少しでも願いをかなえてやりたい気持ちはあった。
だからあの日お見合いするだけならと僕は了承したのだ。
見合い写真を撮るために僕は髪を切り、買ったばかりの慣れないスーツを着て、眼鏡の代わりにコンタクトを入れた。
鏡に映る僕はまるで兄でとても不思議な気持ちになった。
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