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テレビで見た兄の様子を少し真似てみる。
そのぎこちなさが兄とは全然違う。
「うわ、似合わねぇ」
ばかばかしくなって僕は鏡から目をそらした。
そこへちょうどガラッと断りもなく母が入ってきた。
「馬子にも衣装だね」
母は安物のスーツに身を包む僕を見て言った。
母を一人にすることができずにこの年まで一緒に暮らしてきたが、ノックもせずに入ってくるのだけは勘弁してほしい。
だが、僕はまだ一度も母に入ってくるなと言えた事がない。
いつまでも子供あつかいされては困るのだが、母がめいいっぱい愛情を注いでくれたことを思うと何も言えなくなるのだった。
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