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「久しぶり」
次の一口を口に入れようと目を開けた途端、飛び込んできたのは鏡の中の僕だった。
いや、そうではないのはわかっているが、そうとしか思えなかったのだ。
僕にそっくりな彼は懐かしそうに僕を見ている。
この間の兄をまねた僕とは違い、ぎこちないところはない。
あまりに突然現れた兄を見て僕は言葉を失っていた。
少なく見積もっても5年ぶりの再会だ。
「甘いの好きなのも、どんくさいのも相変わらずだな」
驚きすぎて口までもって行く前に止まっていたフォークから、ぽとりとモンブランが落ち、スーツをべったりと汚していた。
兄はさっと右手を上げウェイターをよぶと、おしぼりを頼むついでに同じものをと僕のモンブランを指さしながら言った。
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