3話:ワンワン・パニック 前編

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 翌日。  想子の担当する3歳児クラスの『そら組』はリズム体操をしていた。  美咲先生が弾くピアノの伴奏に合わせて園児たちが踊る。  ぴょんぴょん跳ね回ってみたり、両手を広げてみたり、ぐるっと回ってみたり。  想子は教室の後ろの方で、まだ踊れない子の面倒を見ていた。  そこへ想子にアピールするようにキレキレで踊る園児が現れた。 「ちょっと、何しに来たの? アナタたちは隣の花組でしょ!」  花組の4人だった。 「ソーコ先生、そんなに怒らないでよぉ」 「ウッ……」  うるうると瞳を潤ませる弓弦(ゆづる)のあまりの可愛さに思わず怒る気勢をそがれる。  その虚をつくように、アオイが微笑を浮かべて想子をまっすぐ見つめてくる。 「ごめんよ。でもキミに会いたかったから」  ーーどきっ!  一瞬、心を持って行かれそうになるが、想子は慌てて頭を振った。 「(相手は4歳児……、4歳児……)」  念仏のように心の中で唱えると、両手で両頬をバチバチ叩いて正気を保つ。 「そんなこと言ってももう引っかからないわよ。昨日の帰りだって、私のこと無視してママのところに駆け寄ってたじゃない」  しかし4人は交互に顔を見合わせると、ニヤリと笑った。
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