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アオイの身体は小さかった。
こんな小さな身体で私を守ろうとしてくれている……。
いくら大人びて見えても、実際は4歳児なのだ。
大人の庇護のもとにあるべき存在だ。
それなのに私は何をしているのだ!
なんのために保育士になった!
園児を守り、その成長を手助けするのが保育士である私の仕事じゃないか!
「わ、私は……」
想子は震える足を何とか動かし、アオイを守るために前に出ようとした。
「がるるるる」
犬が身を低く構えて威嚇してくる。
「!!」
想子の身体がすくむ。
でも頑張らないと!
想子は両手を広げ、アオイを庇うように立とうとした。
そのときだった。
水飲み場の方から声が聞こえた。
「待たせたな、アオイ。準備完了だ」
「遅いぞ、蒼矢」
水飲み場には蒼矢がいた。光と弓弦もひょっこり顔を出している。光と弓弦は、それぞれ手にホースを持っている。蛇口に繋がれたそれは、先端には水まきやウッドデッキを清掃するときに使う、トリガー式の高圧洗浄ノズルが取り付けてあった。
「いっくよ~」
「……フッ……狙い撃つぜ!」
2人がトリガーを引く。高圧をかけられた水は、下手な水鉄砲よりも強力だ。興奮している犬に向けて、水が浴びせられた。
犬は思わぬ反撃に驚き、逃げ回る。
やがて逃げ去っていった。
「た、助かった……」
「作戦通りだな」
「考えたのは、この私ですけどね」
メガネのブリッジを上げながら蒼矢が言った。
アオイが壁際まで逃げて来たのは、この子たちの作戦だったのだ。水飲み場のそばまで犬を誘い出したのである。
その機転はとても4歳児には思えなかった。
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