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「……」
「想子先生、どうしたの?」
園長室から戻ってきた想子が、いつまでも遊戯室の入り口で突っ立ったままなので、美咲は思わず声をかけた。
想子は顔面蒼白。いまにも泣き出しそうな表情をしている。
「どうしましょう?」
「いや、だからこっちが聞いてるのよ。なにがあったの?」
「だってぇ……、うぐうぐ……」
美咲にすがりつき、泣き出してしまう。
「ちょ、ちょっと……」
「私、まだ処女なんです!」
「いきなり、なにその告白?」
「もうダメかも知れません!」
「だからなんなの?!」
「私、操を守り切る自信がありません!」
「はあ?!」
「うっ……」
想子はお腹を抱えてうずくまった。
「今度はどうした?」
「ヒーヒーフー」
「ヒーヒーフー」
「ヒーヒーフー」
「なんかもう、アオイたちの相手をすると考えただけで想像妊娠しそうです!」
花組の担当に決まった想子の行く末には、不安しかなかった。
一方その頃、想子が立ち去った園長室ではーーー
「これでよかったかしら?」
執務机に座る園長は、独り言のように誰もいない正面に向かって呟いた。
すると背後から返事がかえってくる。
「ありがとうございます」
「でもあまりやり過ぎちゃダメよ。アナタたち4人の、あの秘密がバレたら……」
「ええ、分かっています」
園長の背後にある窓。その窓のカーテンにシルエットがあった。少し開けられた窓から風が入り、カーテンが揺れる。
チラリと見えたそのシルエットの正体はーー
アオイだった。
【つづく】
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