5話:ファーストキスだった?

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「……」 「想子先生、どうしたの?」  園長室から戻ってきた想子が、いつまでも遊戯室の入り口で突っ立ったままなので、美咲は思わず声をかけた。  想子は顔面蒼白。いまにも泣き出しそうな表情をしている。 「どうしましょう?」 「いや、だからこっちが聞いてるのよ。なにがあったの?」 「だってぇ……、うぐうぐ……」  美咲にすがりつき、泣き出してしまう。 「ちょ、ちょっと……」 「私、まだ処女なんです!」 「いきなり、なにその告白?」 「もうダメかも知れません!」 「だからなんなの?!」 「私、操を守り切る自信がありません!」 「はあ?!」 「うっ……」  想子はお腹を抱えてうずくまった。 「今度はどうした?」 「ヒーヒーフー」 「ヒーヒーフー」 「ヒーヒーフー」 「なんかもう、アオイたちの相手をすると考えただけで想像妊娠しそうです!」  花組の担当に決まった想子の行く末には、不安しかなかった。  一方その頃、想子が立ち去った園長室ではーーー 「これでよかったかしら?」  執務机に座る園長は、独り言のように誰もいない正面に向かって呟いた。 すると背後から返事がかえってくる。 「ありがとうございます」 「でもあまりやり過ぎちゃダメよ。アナタたち4人の、あの秘密がバレたら……」 「ええ、分かっています」  園長の背後にある窓。その窓のカーテンにシルエットがあった。少し開けられた窓から風が入り、カーテンが揺れる。  チラリと見えたそのシルエットの正体はーー  アオイだった。 【つづく】
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