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「ありがとうございました。お若いのに子供の扱いに慣れているんですね」
改札を出たママさんは想子にお礼を言う。
「ええ。私、この近くの保育園で保育士をしているんです」
「へー、保育士さんだったんですか」
「じゃあ、私はこっちなんで」
星蹟桜ヶ丘の駅前。
想子はママさんの胸に抱かれた幼児に手を振り、笑顔で別れた。
その笑顔が徐々に険しく引き締まっていく。
今日は初日だった。
新人の研修期間が終わり、正式に花組の担当と決まって、初めての登園である。
想子は緊張していた。
なにしろ花組にはあの4人がいる。
初日が肝心!
しっかりと先生らしいところを見せねば!!
「よっしゃー! 頑張るぞぉ!!」
多摩川の土手の上に上がった想子は広い河川敷に向かって叫んでいた。
しかしーーー
「美咲先生ぇ~、どうしましょう? 私、いろいろな意味で自信がありません!」。
いざとなると不安になる。
花組の部屋の前まで来た想子は、教室の扉を開けることができずに先輩保育士の美咲先生を振り返った。
「大丈夫よ。私がついてるから。ピンチのときは私がアンタの頬を引っぱたいてでも、保育士の道を踏み外さないようにするから」
「うぅぅうぅ……、よろしくお願いします」
「じゃあ、行くわよ」
「はい!」
想子は覚悟を決めて扉を開けた。
するとそこはーー
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