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7話:ようこそ、花組へ・後編
(前回からの続きで)
ーードキッ!!
想子の胸の奥で爆発する。
不意打ちをくらった想子は頬を赤らめた。
それでも何とか冷静さを保とうと深呼吸する。
「すぅぅはぁぁ」
だがそこに、どこかの席から声が飛び込んできた。
「こちらのテーブル、シャンパン入りました」
「しゃ、シャンパン?!」
驚いて振り返る。
ホスト役の園児がシャンパンと称する某乳酸菌飲料『ヤ●ルト』を高々とかかげていた。おやつの時間に出たのを大事にとっておいていたようだ。
よ、良かった。
アルコールじゃない。
そこはちゃんとごっこ遊びだ。
想子はホッとした。
「はい、飲ーんで♪ 飲ーんで、飲んで♪」
アルミ箔のフタを開けて、楽しげにシャンパンコールをする園児たち。ホストクラブがどういうところかは知らないでやっているのだろう。
「ソーコ、よそ見はダメだよ。今は僕だけを見て……」
隣に座ってきたアオイが見つめてくる。
「うぅ」
「今日はソーコが花組に来た記念だから。楽しんでいってよ」
こうして薄暗いところでアオイの整った顔を見ていると、本物のイケメンホストと話しているような錯覚を覚える。
想子は胸が高鳴るのを感じた。
「どうしたの? 緊張しなくていいんだよ」
「べ、別に緊張なんて……」
「さあ、全部、僕に任せて。僕が想子の心も身体も解きほぐしてあげる」
アオイはそう言って肩を抱き寄せ、想子に密着してくる。
ーードドド、ドキッ!
想子の胸の中で、いくつもの爆弾が地響きを立てて爆発した。
もう限界だった。
このままでは理性が吹き飛ぶ。
「み、美咲先生、助けてください」
想子は身をよじり、助けを求めてすぐ隣の席にいるはずの美咲先生を振り返った。
「あっ……」
言葉を失った。
「私ってさ。いつも周りから頼られてるじゃない? でもでもぉお、たまにはこういう頼り甲斐のある男に甘えてみたかったのよねぇ~」
「……フッ……。いいぜ、今夜は俺に甘えても……」
「きゃー、美咲、嬉しいニャン♥」
ぶっきらぼうにそっぽを向く光の肩に美咲はしなだれかかっていた。完全に骨抜きにされ、軟体猫化している。
すでに敵の手に落ちていた。
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