8話:不審者

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 想子に付き添われ、園長室にやってきた母子は園長に事情を説明していた。 「それでは一時保育を希望するのですね」 「はい。私、引っ越してきたばかりでこっちに知り合いも親戚もいなくて……。でも今日、高校時代の同窓会があるんです。お酒抜きで昼間に集まろうということになって。それで……」  園長の前に立つ母親ーー吉原由里江(よしはらゆりえ)は、消え入りそうな弱々しい声で答えた。  相変わらずオドオドと肩をすくめ、怯えたような、何かすまなそうな顔をしている。  アオイたちに不審者と間違われるのも無理はなかった。  ■一時保育というのは■  通常の保育とは別に、短期間または1日だけ、さらには数時間だけというように保育園に子供を預けられるシステムである。  親側の預ける理由は様々で、急な病気や冠婚葬祭などから、ちょっとした買い物や親が遊びに行くために利用されることもある。   ■ ■ ■
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