1話:モテ期到来?! 前編

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「みんな、やめて! 私のために争わないで!」  想子は自分を巡って争う園児たちを必死になだめていた。だが争いは収まらない。困り果てたところに、先輩保育士の座安美咲(ざやすみさき)が手を叩いた。 「はいはい。ソーコ先生と結婚したかったら、ケンカはしないこと。ケンカする子は、ソーコ先生とケッコンできないわよ。分かった?」  手際よく園児たちをなだめてくれる。 「はーい」  落ち着きを取り戻した園児たちは遊戯室に散らばっていき、何事もなかったかのように、おのおのオモチャで遊び始めた。 「美咲先生、助かりました」 「なかなかのモテぶりね」  ひと安心して頭を下げた想子に、美咲が半ば呆れ顔で言う。 「大人の男性からも、これくらいモテたらいいんですけどね」 「へー、大人の男子にはモテないんだ」 「はい。どういう訳か昔から、幼い子供にだけは好かれるんです」  想子は苦笑いしながら答える。 「なんだろうね。脇の下から幼い子供にだけ効くフェロモンが出ているんじゃない?」 「なんですかそれ?」 「まあ、良かったじゃない。園児に好かれるってことは保育園の仕事が天職ってことだよ」 「ありがとうございます」  想子はそう答えながらも心の中でため息をついた。  もちろん子供のことは好きだ。  だから保育士になった。  しかしやはり健康的な若い女子としては、ちゃんとした彼氏も欲しいと思う。  子供にだけモテてもね……。  そう思っていた。
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